矯正治療と山登りの共通点
矯正歯科治療は登山に喩えるとイメージしやすくなります。登山の目的地(治療目標)を設定して、どのような装備(治療装置)でどのルートを通るのかを決め(治療計画)、今何合目まで登ってきたか(治療経過)についてその都度詳しくお伝えしながら、ガイドである主治医が患者さま本人および保護者の方としっかりとコミュニケーションを取り、二人三脚でゴールを目指していきます。
目指す頂上はみな同じでも、その方ごとにルートやペースは異なります。当院では、大きな山に挑もうとしている患者さまや保護者の方の不安を取り除き、山頂の美しい景色を一緒に眺められるように日々の診療に力を注いでいます。最終的に「矯正治療を受けて本当に良かった」と思っていただけることを願いながら、より良い治療を提供できるよう努力しています。
小児だからこそできる矯正治療
基本的に矯正治療とは、乳歯列期からでも、乳歯から永久歯に生え変わる途中の混合歯列期からでもスタートすることが可能であり、全ての歯が永久歯に生え変わらなければ矯正治療ができないというわけではありません。
矯正専門ではない一般の歯科医院で、矯正相談に来た混合歯列期のお子さんに対して「もう少し歯のはえかわりを待ってから矯正治療をしましょう」という指導を行うケースが多く見られることも、ブラケットをつけること自体を矯正治療とみなす意識に繋がっているようです。
しかし歯並びを悪くする要因には、舌の癖や片噛み、姿勢や口呼吸など、乳歯列の頃から改善を図れるものが多くあり、また成長時期であれば顎の発育を利用して歯が並ぶスペースを確保する試みも可能です。MFT(筋機能療法)と呼ばれる治療法によって舌や口唇を正しい位置に安定させて口の周りの筋肉のバランスを良くしたり、取り外しのできる装置で成長・発育を促進したり、頬杖やうつぶせ寝などの体の癖を治したりと、小児矯正には歯並びを整えるためのブラケット装着とは異なる手立てが数多くあります。
当院では矯正の専門家としてその患者さまにもっとも有効な治療法を判断していますので、治療の選択の幅を広げるためにも、お子さんの歯並びに不安をお持ちになったら早い段階でご相談いただくことが大切です。
「機能の回復」を念頭に置いた小児矯正治療
小児矯正治療を行うにあたっては、『正しい機能の回復』を特に重視しています。適正な顎の成長発育を促しながら、咀嚼や嚥下(噛み砕いた食べ物などを飲み込むこと)、発音といった機能面の改善を目指します。また口呼吸から正しい鼻呼吸に導くこともさまざまな面で大切であり、口呼吸で顎が狭くなってしまっているところを鼻呼吸にすることによって、本来あるべき顎の大きさにすることも可能になります。
MFTによる筋機能トレーニング
当院では矯正治療の一環としてMFT(Myofunctional Therapy)を取り入れています。MFTは日本語で口腔筋機能療法といい、舌や口の周りの筋肉が正しく機能するように訓練し、維持することを目的とした治療を指します。口腔筋や舌癖解消のトレーニングを行うことで、歯並びを取り巻く筋肉のバランスを整え、舌癖を改善してあるべき正しいお口周りの成長発育に誘導していきます。トレーニングの前後には舌圧測定器や口唇圧測定装置を用いた機能検査を行い、MFTの成果の客観的な指標として役立てています。
小児矯正の歯並び改善以外のベネフィット
小児矯正を行うメリットとして、歯並びを綺麗にすることとは別に、十分な気道が確保できるようになることで睡眠中の呼吸面におけるトラブルの改善に貢献する可能性もあると考えています。深い睡眠が十分に得られないお子さんは身体や精神の発達において大きな影響を受けるため、小児矯正の重要性はより大きくなると言えます。
成人になってからの矯正治療
「矯正治療は子どもが受けるもの」というイメージがありますが、矯正治療に年齢制限はありません。当院では30歳や40歳、さらに上の世代の方も矯正治療を行っています。
成人だからこそ、歯の健康やアンチエイジングのためにも矯正治療はとても有効であり、多くの方が矯正を行うことで美しい歯並びとすっきりと整った口元やプロファイル(横顔のバランス)を獲得し、「自信を取り戻すことができた」と喜ばれています。なお成人の方の場合は既に顎の成長が止まっており、顎の発育を利用して治療を進められる小児矯正と違って、抜歯が必要になるケースが多くなります。矯正治療を行うにあたっては抜歯するかどうかも含めて患者さまとしっかりと話し合い、その方のお口の状態やライフスタイルにもっとも適した治療計画を立てていきます。